賃貸テナントに休業補償はある?入っておくと安心できる保険も紹介
例えば、銀座のような一等地でビジネスを展開する際、万が一の休業リスクは計り知れない損失をもたらす可能性があります。
テナント休業補償の有無と、それを補う保険の知識は、安心して事業を進めるために不可欠です。
本記事では、休業リスクに備えるための保険選びのポイントを詳しく解説します。
目次
入居しているテナントビル側の都合で休業する場合に保証はあるのか?
テナントビルの管理に起因する休業が発生した際、テナントは法的に定められた補償を受けることはできませんが、家賃の減額を求める権利があります。
これにより、一定の損失補填が期待できます。店舗経営においては、予期しない休業リスクが常に存在します。特に、ビル管理者の判断による営業停止はその一例です。
考えられる状況としては以下の通りです。
- 老朽化に伴うビルの修繕
- 電気設備の大規模な更新作業
- 緊急を要する雨漏り修繕
これらの理由で営業ができなくなった場合、ビル管理者に対して休業補償を請求することは通常、法的に保証されていません。ビルのメンテナンスは必要不可欠であり、それに伴う休業に対して補償を義務づける法律はないため、テナントは営業できなかった期間の家賃減額を主張することが一般的です。
しかし、ビルの管理不備が原因での休業、例えば管理されていない建物からの雨漏りが原因である場合、テナントが管理者に対して休業補償を請求することはあり得ます。
テナントは「店舗休業保険」に加入するべきなのか?
休業による財務への影響を防ぐため、店舗休業保険の加入は企業にとって重要です。この保険は、休業期間中の家賃や人件費などの固定経費を補填し、ビジネスの持続力を高めます。収入が途絶えても避けられない支出に対応するため、保険のカバー範囲を正確に理解し、適切な保険を選ぶことが必須です。
以下では、店舗休業保険が支給される状況とそうでない状況を明らかにします。
店舗休業保険で保険金が支払われるケース
店舗休業保険の適用は特定の状況に限られており、火災保険の特約として組み込まれている場合は、その支払い範囲が火災保険の対象範囲に準じることもあります。
保険会社や契約内容によって補償範囲は異なるため、保険の約款や契約書を確認して補償内容を把握することが重要です。
以下は店舗休業保険がカバーする一般的な事例です。
- 火事、雷による損害、配管の破裂や爆発
- 風害、雹害、雪害による被害
- 水漏れや水害
- 車両や航空機の衝突事故
- 盗難事件
- 洪水による損害
- 食中毒による営業停止命令
- 偶発的な破損事故
とくに飲食店にとって重要なのが「食中毒による営業停止」のケースです。
食中毒が起こると、保健所による立入調査が実施され、食品衛生法に違反していることが判明した場合、その程度に応じて行政指導や処分が行われます。
軽微な違反では口頭での指導が行われますが、書面による指導や、重大な違反があった場合には、即座に書面での指導がなされることもあります。
違反が深刻であるか、改善が見込めない場合は、「営業停止処分」や「営業禁止処分」が下されることになります。
食中毒の原因となる病原体が明確でない限り、多くは営業停止処分が適用され、その期間は通常1日から20日未満です。
この期間を超えても改善が見込めない、または営業再開により同様の食中毒が再発する恐れがある場合は、営業禁止処分に至ることがあります。
店舗休業保険で保険金が支払われないケース
店舗休業保険は、特定の状況下でのみ保険金の支払いが行われます。以下に、保険金が支払われない典型的な例を挙げます。
- 建物や設備が経年劣化、錆、腐食、ひび割れ、虫害、ネズミ害などにより損傷した場合
- 1時間未満の停電が原因で建物や設備に損害が発生した場合
- 強風や降雨、降雪、砂嵐により建物に被害が出た場合
- 地震、火山噴火、津波による損害が発生した場合
- 天候を考慮して自己判断で休業を決定した場合
店舗休業保険は、避けられない事情による休業時にのみ適用されるものです。自然災害や予期せぬ事故が原因でない限り、例えば建物が経年劣化で倒壊し休業に至った場合や、予防的な自主休業は補償の対象外となります。
ただし、大雪や大雨などの自然災害によって建物が損害を受け、営業が不可能になった際は、店舗休業保険の適用が考えられます。
関連記事:テナントや店舗の場合でも地震保険には加入したほうがいいの?知っておくべき地震保険の基礎知識
店舗休業保険で支払われる内容
店舗休業保険において支払われる保険金には以下の種類があります。
損害保険金
店舗が休業する際に生じる収益損失をカバーするため、店舗休業保険は特定の日額保険金を提供します。
この日額は、平常運営時における1日あたりの粗利益に基づいて設定され、実際に店舗が閉鎖された日数に応じて保険金が計算されます。
保険金の支払いには上限があり、これは保険契約で定められた最長の支払期間によって制限されます。
具体的な保険金額は、最新の粗利益の数値と実際に営業を停止した日数を乗じることで求められ、これにより休業期間中の損失収益が補償されます。
営業継続費用保険金
店舗休業保険は、事業を継続するために必要な追加経費も補償の範囲内に含みます。
例えば、火災によって工場の機械がダメージを受け、急遽代替設備のリースが必要になった場合の出費はこの保険でカバーされます。
また、ビジネスを再開する過程で発生する通常以上の残業や、休日及び深夜労働の手当ても、営業継続に関わる費用として保険金の支給対象となり得ます。
このように、休業している間にも発生する定常的な支出や、営業再開のために発生する追加の経費をカバーするのが、店舗休業保険の役割です。
請求権の保全・行使手続費用保険金
休業損害が第三者の責任によるものである場合、その第三者から損害賠償を請求するために必要な証拠収集や法的手続きに関わる費用が保険によってカバーされます。
この保険金は、休業に伴う損失が他者の過失に起因する場合に、その賠償を追求する際に発生する法的な経費を補償するものです。
例えば、他のテナントの過失による火事であなたの店が被害を受けた場合、そのテナントに対する賠償金請求に必要な経費がこの保険の対象となります。
店舗休業保険の保険料の算定方法と相場
店舗休業保険の料金は、日ごとの補償額、最高補償限度額、そして補償が行われる期間によって定められます。日々の補償金が増えたり、補償期間が長くなるほど、保険料も上昇します。
保険の料金は、各保険会社が設ける補償上限や補償日数に応じて変わるため、具体的な料金を把握するには見積もりが必要になります。
ただし、保険会社が「1日につき30,000円の補償」といった明確な日額補償を提供している場合は、保険料も予め決まっているので、見積もり手続きは簡単になります。
店舗休業保険以外にテナント店舗が入っておくと安心な保険
店舗経営においては、休業保険のみならず、様々なリスクへの対策も考慮することが大切です。
テナントが加入しておくと安心できる保険をいくつか紹介します。
火災保険
火災保険は、万が一店舗が火事に見舞われたり、周辺で発生した火災によって損害を被ったりした際に、店舗の設備や在庫の再購入コストなどをカバーするための不可欠な保険です。
店舗オーナーにとっては、火災保険の加入は必須の安全対策といえます。
この保険は火事の他にも、落雷、爆発、風による被害など、多岐にわたるリスクを補償範囲に含むことが一般的です。
関連記事:テナントの火災保険とは?補償の範囲や安く抑える方法などについて紹介
借家人賠償責任保険
店舗を賃貸物件で運営する際には、火災保険の他に、借家人賠償責任保険にも注目することが大事です。
この保険は、テナントが使用する賃貸スペースで起きた損害事故によって、物件のオーナーへの賠償責任を補償するものです。賃貸で事業を展開する際には、この種の保険への加入が極めて重要です。
テナントが使用するスペース内で発生した事故や損害により、物件の所有者に対して生じる賠償責任をこの保険がカバーするため、水漏れや火事による建物への損害に関する賠償責任も含まれます。
施設賠償責任保険
施設賠償責任保険は、店舗の運営中に第三者に損害を与えた場合の賠償を保障する保険です。
この保険があれば、従業員が顧客に損害を与えた際も、保険からの補償を受けることができ、経営上の財務リスクを減少させることが可能です。
店内で発生した事故による顧客や他者の負傷、店舗の設備や商品に起因する事故に関する賠償もこの保険の範囲内です。
生産物賠償責任保険
食品を提供する業態であれば、提供した商品が原因で顧客が健康上の損害を被った際に、生産物賠償責任保険がその損害賠償を担います。
特に飲食業界では、食中毒のリスクが避けられないため、この保険への加入は、万が一の事態が発生した際に企業の財務に重大な影響を及ぼすことを防ぎます。
この保険は、販売した食品に起因する損害や、製品の欠陥から生じる事故などの賠償責任を保障するものです。
受託者賠償保険
受託者賠償保険は、委託された業務を実施している際に生じた事故や過失による損害に対して賠償責任を負う場合のリスクを軽減するための保険です。
この保険は、業務委託に関連する財務的なリスクを軽くすることで、委託業務を安心して行うことを可能にします。例えば、クライアントの財産を取り扱う過程で損害を与えてしまった場合にも、その賠償責任をこの保険がカバーします。
クリーニング店が顧客の衣服を誤って損傷したケースなどが、この保険の適用例となります。
テナントのための保険ガイド
銀座での店舗運営は、大きなチャンスをもたらす一方で、それなりのリスクも伴います。
休業の可能性を理解し、適切な保険に加入することは、ビジネスを安定して続けるために欠かせません。
テナントビルの管理上の問題で店を閉めなければならなくなった際には、直接的な補償は難しいかもしれませんが、家賃の減額交渉は可能です。
店舗休業保険に加入しておけば、予期せぬ休業時の経済的リスクを減らし、固定費の負担を軽減してビジネスを支えることができます。
保険金の支払いは、自然災害や突発的な事故に限定され、意図的な行為や予見可能な理由での休業は含まれません。
保険料は、補償額や保険期間によって変わります。火事や物損、第三者に対する損害、食中毒、委託業務での不慮の事故など、多方面のリスクに備えるために、火災保険、借家人賠償責任保険、施設賠償責任保険、製品賠償責任保険、受託者賠償保険の加入をお勧めします。
これらの保険によって、テナントは予期せぬ事態から守られ、安心して事業を運営できます。
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