03-3538-1791お気軽にご相談ください
公開日 2023.08.25 更新日 2024.01.15

テナントの立ち退き料の相場を解説

「テナントの立ち退き料の相場は?」
「立退料には何が含まれているの?」
「テナントの立ち退き交渉のポイントが知りたい」
場所を借りる以上は必ず発生する「立ち退き」ですが、気になるのはそれにかかる料金です。

 

本記事では、テナントの立ち退き料の概要から、相場、交渉ポイントなどを解説していきます。経営者の方は必見です。

立ち退き料とは

まずは、そもそも立ち退き料とは何なのか、以下の3つの側面から解説していきます。

  • テナントの立ち退き料に含まれているもの
  • テナントの立ち退き料が支払われるケース
  • テナントの立ち退き料が支払われないケース

それぞれ解説していきます。

テナントの立ち退き料に含まれているもの

まずはテナントの立ち退き料に含まれているものを見ていきましょう。
基本的には以下の5つが該当します。

  • 工作物補填
  • 動産移転補償
  • 借家人補償
  • 移転雑費補償
  • 営業休止補償

それぞれ見ていきましょう。

 

工作物補填

テナントが退去する際には、原則として契約で定められた期間の前に退去しなければならないことが多いです。
その場合に起こる問題のひとつが、テナントが物件改修のために設置した什器や設備、壁面に設置された看板など、いわゆる「工作物」の取り外しによって、物件にダメージが生じることです。

 

それに対して、工作物補填とは、テナントが撤去した工作物によって生じた床や天井、壁面などを修繕するための補填費用のことです。
たとえば、床に埋め込まれた配線工事の穴を埋めたり、天井に取り付けていたエアコンのダクトを補修したりするための費用となります。

 

工作物補填はテナントが負担するものであり、契約書によってどのような費用が含まれるかが定められます。
テナントは、契約時に工作物補填費用がどの程度かかるかを予め把握し、改修前にどの程度費用を見積もっておくことが必要です。

 

動産移転補償

テナントは、物件を借りる際に原状回復条項を契約に含んでいる場合があります。
このため、退去する際には原状回復をしなければなりませんが、移転作業や撤去に要する工程に関連して費用が発生する場合があります。
このような費用を補償するために、立ち退き料の中に「動産移転補償」が含まれることがあります。

 

たとえば、商業施設内のテナントが撤退する際には、棚や陳列台、照明、カメラ、監視機器などの設備・備品の撤去費用や、産廃物処理費用、修繕費用などがかかるため、これら費用を補償するために動産移転補償が設けられることがあります。

 

ただし、退去時の設備や備品の状態や数量によっては、実際に補償を受けられるかどうかについては契約内容などを確認する必要があります。

 

借家人補償

借家人補償とは、テナントが退去する際に、家主が次のテナントを探すために物件を改修する必要がある場合に発生する費用です。
たとえば、クリーニングや補修、リフォームなどが必要になる場合があります。
このような費用が発生すると、借家人補償としてテナントに支払われることがあります。

 

ただし、借家人補償が発生するかどうかは、契約内容によって異なるため、契約の際によく確認することが必要です。
また、借家人補償は、原則としてテナントの退去後に支払われることが多いため、テナントが引越し代や敷金などで必要な費用を用意しておく必要があります。

 

移転雑費補償

移転雑費補償は、テナントが退去する際に発生する物件の移転に関連するさまざまな費用を補填する料金です。
具体的には、移転に伴う引越し費用や解約後にかかる清掃費用、改修費用、鍵交換費用などが含まれます。
このような費用は、テナントが退去する際には不可避的にかかるものであるため、退去時に一括で費用を支払うことが求められる場合があります。

 

移転雑費補償は、これらの費用の一部または全部を補填することで、テナントが退去後に残されたコスト負担を軽減する役割を持っています。
しかしながら、移転雑費補償が不当に高額に設定される場合もあり、その点には注意が必要です。

 

営業休止補償

営業休止補償とは、テナントが退去することによって生じる営業休止に伴い発生する損害を、貸主が賠償するための料金です。
具体的には、たとえば店舗の建物が改修工事のために一時閉店せざるを得ない場合などに、閉店期間中の売上損失や物品の備蓄費用、従業員の給与費用などに対して貸主が補償する場合があります。

 

営業休止期間中には収益が得られないため、テナントの経営に直接的な影響を及ぼすため、契約書に基づき貸主が補償金を支払うことで、テナントの退去を促進することができると考えられます。

テナントの立ち退き料が支払われるケース

テナントの立ち退き料が支払われるケースは、一般的に以下のような場合が考えられます。

 

【解約に伴う退去】
貸主が契約期間内に解約を申し出た場合、正当な理由がない限り立ち退き料が発生します。

 

【契約違反による退去】
貸主が契約に違反した場合、テナントは契約の解除や解雇などの措置をとることがあります。
この場合にも、立ち退き料が発生しえます。

 

立ち退き料は、家主とテナントとの間で交わされる契約書等で取り決められることが一般的で、その金額や支払い方法などは貸主とテナント間で合意されます。

テナントの立ち退き料が支払われないケース

テナントの立ち退き料が支払われないケースは、以下のような場合が考えられます。

 

【借主側が契約書に違反した場合】
借主側が契約書に違反した場合には、貸主に対して損害賠償などの処理が必要となることがあります。
この場合、立ち退き料の支払いが無効になることが多いです。

 

【借主の責任による解約の場合】
借主側が自己責任で解約した場合、貸主側は立ち退き料の支払いをする必要はありません。

以上のように、テナントの立ち退き料が支払われないケースには、さまざまな原因があります。

 

ただし、契約書を遵守することがもっとも重要であり、契約書に基づいて立ち退き料の有無は決まります。

テナントの立ち退き料の相場

次に、テナントの立ち退き料の相場を解説していきます。
ここでは、以下の2つの観点から解説します。

  • 最低限必要な立ち退き料の目安
  • 裁判に発展した場合の立ち退き料の目安

それぞれ確認してください。

最低限必要な立ち退き料の目安

テナントが立ち退く際の立ち退き料は、さまざまな要素によって相場が異なります。
たとえば、店舗の立地や広さ、店舗の種類や業種、契約内容や条件、立ち退きする理由などが影響します。
ただし、以下は一般的に最低限必要な立ち退き料の目安となる要素です。

 

【賃料に比例する立ち退き料】

テナントの立ち退き料は、通常は賃借料に比例する形で算定されます。
一般的には、事務所の場合は賃料の6ヶ月分、店舗は長期入居者の場合で最大賃料の2〜3年分です。
ただし、立地や業種などによって異なるため、事前に交渉を行い、合意した額が目安になります。

 

関連記事:テナントの家賃・賃料の決まり方や相場を解説

 

【退去費用を含む話し合い】
テナントが退去するために必要な手続きや費用、立ち退き後の清掃や修繕などに関連する費用を負担することがあるため、合意された金額にはこれらの費用が含まれることもあります。
これらの要素を考慮し、貸主とテナントが話し合いを行い、合理的な合意が得られれば、妥当な立ち退き料が算定されます。

 

ただし、建物の状況や契約条件などによっては、相場以上の金額が必要になる場合があるため、個別に検討することが重要です。

裁判に発展した場合の立ち退き料の目安

立ち退きに関して、貸主と借主双方の意向が一致しない場合、訴訟や仲裁などの法的手段を用いることがあります。
このような場合、立ち退き料の相場としては、まずは商業施設の場合だと年間家賃の約100倍が一般的な基準です。
ただし、店舗の種類や場所によっては、これよりも高い場合があります。

テナントの立ち退き交渉の流れ

テナントが立ち退きする場合、貸主との立ち退き交渉を行うことが多くあります。その流れは以下の通りです。

  1. 貸主から借主へ立ち退きの説明文書を提示する
  2. 立ち退きの説明を口頭で行う
  3. 互いの事情を聞き合う
  4. 立ち退き料の交渉を行う
  5. 契約書を作成する

立ち退き交渉は、しっかりと取り組むことが重要です。
自分に不利な条件を受け入れてしまうと、経済的な負担が大きくなる可能性があるため、専門家に相談することもひとつの手です。

 

関連記事:テナント契約での形態と入退去時の注意ポイント5つ

テナントの立ち退き交渉のポイント

ここからは、テナントの立ち退き交渉のポイントを見ていきましょう。
主なポイントは以下の4つです。

  • 交渉は早めに始める
  • 文書で提示する
  • 交渉決裂のケースも考えておく
  • 裁判を避ける

それぞれ解説していきます。

ポイント①交渉は早めに始める

早めに交渉を始めることは非常に重要なポイントのひとつです。
これには以下の理由があります。
まず、交渉には時間がかかることが多く、遅れることによって立ち退き期限が迫るなどの問題が生じます。
早めに交渉を始めることで、期限までに交渉が終わります。

 

また、早めに交渉を始めることによって、多少借主へ誠実な印象を与えることができます。
交渉にはお互いに歩み寄る必要があり、信頼関係が築かれていれば、円滑な解決につながることが期待できます。

 

以上のように、テナントの立ち退き交渉においては、早めの行動が非常に重要であり、スムーズな解決につながるポイントのひとつとなっています。

ポイント②文書で提示する

テナントの立ち退き交渉において、交渉内容を文書で提示することは重要です。
口頭でのやり取りに比べ、交渉の細かいポイントや条件を明確にすることができ、後々のトラブルを防ぐことができます。
交渉内容を明確にした書類には、立ち退きの内容(日時や立ち退き料金)、支払い方法、修繕費用の分担、内装修繕などが含まれます。

 

また、交渉を行う際には交渉内容を正式な書類にまとめることで、貸主との信頼関係を構築できます。
交渉内容を明確にした文書を作成する際には、弁護士に相談することで、交渉内容の進め方や書類の作成方法などをアドバイスしてもらうことができ、円滑な交渉の実現につながります。

ポイント③交渉決裂のケースも考えておく

テナントの立ち退き交渉はできるだけ円滑に進むことを望むものですが、交渉が決裂するケースもあるかもしれません。
その場合に備えて、どのような対応をすべきなのか、事前に考えておくことが重要です。

 

まずは、違法行為を避けるためにも、法律や契約書で定められた手続きを守る必要があります。
また、相手方との対立を避け、落ち着いた対応をするよう心掛けることが大切です。
具体的には、対話を継続することや、必要に応じて第三者の仲介・調停を受け入れることなどが挙げられます。

 

一方で、交渉が決裂してしまった場合でも、法律上の権利を行使することができます。
貸主からの正当な請求に応じて立ち退きを行い、所有物を回収することが求められますが、その際には法的手続きを確認し、必要ならば弁護士等の専門家のアドバイスを仰ぐことが重要です。
過剰な反発や手段の選択を誤ってしまわないためにも、冷静な対応が求められます。

ポイント④裁判を避ける

テナントの立ち退き交渉において、裁判沙汰になることは可能な限り避けるべきポイントです。
裁判は時間と手間がかかるばかりか、費用もかかるため、交渉の本質から外れることがあります。
事前に交渉の相手と話し合い、解決策を見つけ出しましょう。

 

具体的な方法としては、交渉のポイントを明確化し、双方の希望や要望を正当に評価することが考えられます。
また、立場によっては仲介者を立てたり交渉に参加する弁護士を選んだりすることも役立つかもしれません。
何よりも、相手の立場や状況を理解し、双方が納得のいく解決策を見つけ出すことが大切です。

テナントの立ち退きが成立したケース

最後に、実際にテナントの立ち退きが成立したケースを見ていきましょう。
ここでは、パターン別に2件紹介します。

ケース①平成28年7月14日東京地方裁判所判決より

賃貸人は高齢かつ要介護者。
長男夫婦と同居するために、賃貸建物を賃貸人自身が利用する必要がありました。
しかし、賃借人は癌治療中であり、転居について肉体的、精神的な負担を伴うことが発覚。
近隣の同程度の物件に転居する場合、現状よりも家賃が高くなることもあって立ち退き料の高額化を求めました。

 

裁判所の判断としては、立ち退き料200万円の支払を受けることと引き換えに、借家人に対し、退去することを命じました。
裁判所は、本件の事情のもとでは、引越料相当額に賃料の約2年分を加えた金額を立ち退き料とするのが妥当であるとして200万円を算出しています。

ケース②平成29年5月11日東京地方裁判所判決より

建物は築75年が経過し、躯体の歪みが生じるなど老朽化が進行していました。
賃料が低額であり敷地の価値が有効利用されていると言い難い状況にあるため、立ち退き交渉に移りました。
しかし、賃借人は長期間居住しながら、低額の賃料を前提に生活設計を立てていて、転居が容易ではありませんでした。
賃借人には重い病気や家族の障害、要介護状態などの事情があり、近隣の医療機関への通院や地域住民との連携などを継続する必要性も高く、立ち退き料の高額請求を行います。

 

裁判所は、借家権価格を鑑定したうえで、借家権価格に引っ越し代相当額を加算した額を、裁判所の判断で3割減額して立ち退き料を算定しました。
裁判所は3割減額の根拠として、建物の老朽化が進行していることや低額な賃料で長期間居住したことにより借家人が利益を得てきたことを挙げています。

テナントの立ち退き料の相場は賃料に比例する

テナントが立ち退く際の立ち退き料は、物件や地域によって大きく異なりますが、一般的には賃料の数ヶ月分とされていますが、裁判の場合には高額になることもあります。
ただし、この金額はあくまでも目安であり、交渉によって上下します。

 

また、借主が違法行為をしている場合や、契約に違反している場合は、立ち退き料は減免されることがあります。
逆に、貸主が問題を起こし、テナントが被害を被った場合は、別途補償金や違約金の支払いを求めることができる場合もあります。

 

テナントは、貸主との交渉によって立ち退き料や条件を決定する際、契約書や法律を確認しながら進めることが大切です。
また、交渉が成立した場合は、交渉内容を文書でまとめ、両者がサインをしたうえで保管することが望ましいです。

 

銀座のテナント・貸店舗を探すなら銀座オフィスマンへご相談ください。仲介実績が豊富にあるため、ご興味がある方はぜひ一度お問い合わせください。
事業紹介につきましては、こちらからご覧になれます。