テナントビルの電気料金はどうなっている?仕組みや節電方法を紹介
電気代が高騰している昨今、電気代をどれだけ節約できるかでコストが大きく変わってきます。テナントビルの入居者が電気代を削減するには、まず電気契約や配給の仕組みを知ることが大切。実のところ、ビルによって電気契約は違っているからです。
本記事では、テナントビルの電気代の仕組みや相場、節電方法などを紹介します。
目次
テナントビルの電気代の仕組み
テナントが入るビルの電気代は、一括契約か店舗ごとの個別契約の2つの方法があります。
一括契約はビルのオーナーが一括でビル全体の電気料金を支払い、個別でテナントごとに請求するやり方。そして個別契約は家庭と同じように、それぞれのテナントで電気契約をして支払うやり方です。
これはビルによってあらかじめ決まっているため、たとえば一括契約のビルに入居したのに自分たちはテナント分を自分たちで支払うといったことはできません。
ビル単位の一括契約
ビルと電力会社が直接契約し、支払いはビルが電力会社へまとめて行う方法です。ビルひとつ、全体でまとめて受電するため、一般的な電気代よりは安くなる可能性があります。
仕組みは電力会社からビルが高圧受電を受け、それから変電気設備を利用してそれぞれのテナントへ配給します。テナントごとにメーターをもうけ、それを使って電気代を割り出して個別に請求を行うのです。
ただし、この方法ではテナントが電気料金の内訳を知ることはできません。ビルと電力会社がした契約の中身などは知らされないからです。
そのため、1入居者だけが節電しても、他のテナントが電気を使い放題にしていれば、電気の節約は実りません。ビルによっては管理者がすべてのテナントに電気代の現状と節約呼びかけをするところもありますが、多くの場合は電気代が上がっても気にせずテナントに請求するでしょう。
店舗ごとの個別契約
一般の住宅と同じように、テナントがそれぞれ選んだ電力会社と契約する方法です。豊富にある電力会社や業務用プランの中から自分のテナントの形態に合わせた契約を選べます。
契約内容がテナントで確認できるため、節電すれば料金を抑えることも可能です。
テナントビルの電気代相場
テナントビルの電気料金相場はどのくらいでしょうか。電気代は契約内容やお店の規模、電気の使用量によっても異なるため、一概には言えません。しかし業務用であることを踏まえて、さらにここ2022年の終わりより電気代が高騰していることを考えると、従量単価の相場は20円〜35円/kWhと言われています。
参考までに、北海道電力が提供する業務用電力の一般料金(2023年6月現在)は、オフィスビル(高圧6,000ボルト)で基本料金が1kWhにつき2,547.60円、従量料金が1kWhにつき33.24円でした。
参考:北海道電力「業務用電力」
月々の電力消費量にこの20円〜35円/kWhをかけるとおおよその電気代を計算できます(請求金額には他にも燃料費調整額などが付加されるため変動する)。
たとえば大きな居酒屋(面積を366㎡とする)の年間消費電力が約278,000kWhだったとすると、もし北海道電力で電気契約をしていれば、月々の電気代は約76万4,000円もかかるとわかります。
【契約方法別】テナントビルの電気代を節約する方法
大きな負担がかかる電気代は少しでも節約したいもの。そこでテナントビルの電気代を節約する方法をみていきましょう。
一括契約の場合
共有部分の電気を極力使わないようにすることや、電灯をLED電気へ交換すること、夏場など電気量が上がるタイミングでは全館上げての節電をオーナー側から促すことが大切です。
コスト意識の高い施設管理者がいれば、高圧電気契約の仕組みを理解して各テナントへ報告することも有効でしょう。
ただし通常、オーナー側はテナントに請求すればいいと考えることが多く、改善には簡単に動きません。電気代が高いと声をあげる、共有設備を省エネ化するように求めるなど、積極的な働きかけが必要です。
個別契約の場合
一般家庭と同じく、電気会社を変える、できる節電を行うという地道な努力が必要です。
中でも電気会社は現在豊富にあり、業務用にもさまざまなプランがあります。自社にあった電気プランを探し、契約し直すことも必要でしょう。
【今日からできる】そのほかの電気代を節約する方法
テナントごとが個別でできる電気代の節約方法を紹介します。
- 省エネ対策
- 空調のフィルター掃除
- 扇風機やサーキュレーターの導入
- 残業の削減
省エネ対策
古い電気機器は省エネ設定がないものが多いのですが、最近の電化製品は多くが省エネ設定ありとなっています。思い切ってテナント内で使っている設備を交換するという方法が有効です。
たとえば省エネ化できるものは、以下のようなものがあります。
- 照明をLEDに交換する
- 業務用エアコンを省エネ商品にする
- コピー機などを新調する
- 業務用冷蔵庫や冷凍庫の温度設定を適切に行い整理する
LED電気は初期費用がかかりますが、一度替えておけば長期間もつためその電気節約効果は絶大。買い替えや付け替えの手間も減るため、おすすめです。
古い業務用エアコンを使っていれば、新しいものに替えると一気に電気代が安くなることがあります。冷暖房効果が落ちていたり音が出たりしている場合は、買い替えを検討しましょう。
また、特に飲食店であれば業務用冷蔵庫や冷凍庫の消費電力は大きな影響があります。温度設定は適切にし、冷えやすいように冷蔵庫内の整理整頓をしましょう。メンテナンスも忘れずに行うことが大切です。
関連記事:テナントで必要な電気容量は?テナントの種類ごとに紹介
空調のフィルター掃除
エアコンのフィルター掃除が電気代の節約につながるのは、企業も家庭も同じこと。季節ごとにエアコン掃除を行いましょう。冷暖房の効率がアップします。
扇風機やサーキュレーターの導入
冷暖房の効きをよくするためのサポーター的機器を導入することも大切です。扇風機やサーキュレーターを使い、効率よく事務所や店内を冷やしていきましょう。
温度にムラがなくなるため、必要以上にエアコンの温度を下げなくてもよくなります。扇風機やサーキュレーターやエアコンに比べると電気代が安いため、組み合わせて使うことがおすすめです。
残業の削減
電気料金を安くするためには、電気をなるべく使わないことが必須です。そのため、オフィステナントでは従業員が残業しないように仕事環境を整えましょう。
残業が少なくなれば、その分照明や空調は使わずに済みます。
あまりにも電気代が高いと感じたら
それでもあまりに電気代が高い!と感じたら、管理者に電気代の内訳を確認してみましょう。本当に自分のテナントが金額分の電力を消費しているのかを確かめる必要があります。
過去には設備維持費や電気代確認にかかる人件費などを電気料金に上乗せして請求していた事例があり、裁判にもなっています。ビルの管理者が上乗せ請求をしていた場合には、返還請求ができます。
関連記事:テナントの電気代上乗せに関する判例を紹介
テナントへの電気料金請求時の注意点
オーナー側も電気料金の請求時には、気を付けなければなりません。前述したように、テナントが使った電気代を請求するときに「維持費」として金額を上乗せし、裁判で負けて返金となった事例があります。
確かに受変電設備の維持にはコストがかかるでしょう。電気代請求の事務処理にも人手が必要です。そのため不当だとは言い切れない部分はありますが、問題視されているという事実は理解しておきましょう。
請求・回収専門の代行業者も
テナントごとの電気料金を、請求・回収する専門の代行業者もいます。あまりにも手間だと感じるのであれば、オーナー側はそのようなサービスの利用も検討してみてください。
電気料金に異常を感じたら内訳を確認しよう
テナントビルの電気は2つのパターンがありますが、そのうち一括契約の場合は自分たちが使った電気量がはっきりとわかりません。日ごろからの節電は大切ですが、あまりに高いと感じたらビルの管理者へ確認するようにしましょう。
また、個別で契約できる場合は、手間を惜しまず安い業務用プランを探すなどしてみてください。